プレス加工とは
プレス加工は金属の加工法の一つです。
上型・下型の2つのパーツからなる金属の型(これを金型と呼びます)のを用意し、上型と下型の間に金属の板を挟み、圧力をかけて型どおりに抜いていく方法です。生地からクッキーを型で抜いていくものと原理的には変わりません。
金型を用意しなければならないものの、一度金型を用意してしまえば、大量に同じものを作ることができます。よって、プレス加工は大量生産品を加工するのに向いていると言われています。
金属加工の方法
プレス加工以外にも、金属を加工する方法はいくつかあります。一般的には、金属加工の方法は、以下の4つに分類されます。
加工法 | 特徴 |
切削加工 | 金属の塊に刃をあてて、削ったり穴を空けたりして加工する方法。切削用の加工機械を用いて加工するのが一般的。 |
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プレス加工 | 金型を使って、板状の金属を使って打ち抜いていく。プレス機と呼ばれる機械を用いて加工する。 |
鋳造 | 鋳型と呼ばれる型に、溶けた金属を流し込んで形にする。いわゆる「鋳物」。昔から仏像や鐘などを作る手段として用いられてきた。 |
粉末焼成 | 粉状の金属と接着剤を混ぜたものを型の中で焼いて固める方法。粉末の金属を用いるので、合金(いくつかの金属を混ぜ合わせたもの)の加工に有利 |
プレス加工の分類
一口にプレス加工と言っても、その中で様々な加工法が存在します。
絞り | 板状の金属に圧力をかけることにより、器状に加工していく加工法。 |
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抜き | その名の通り、板状の金属から製品になる部分を「抜く」加工法。 |
曲げ | 金属を曲げる加工法。鋭角に折り曲げたり、丸く折り曲げたり様々な曲げ方がある。 |
つぶし | つぶしとは一般的に鍛造加工の事を言います。 単純な鍛造加工の場合は、圧力をかけると余分な金属は外に逃げていきます。 しかし、この金属(肉という)を逃がさずに盛り上げて形にしていく加工法が当社独自の一体化成形技術です。 この一体化成形は材料を効率的に使用でき、立体的な加工も可能にします。 |
プレス加工と言えば、一般的には絞り・抜き・曲げ加工を行うことを指すことが多いのですが、当社ではつぶしの技術を取り入れています。このつぶしの技術を取り入れることにより実現したのが「3次元立体成形技術」です。金属をまるで粘土のように扱うことができ、複雑な形状のものも加工することができます。
金型について
プレス加工の話をする時に避けては通れないのが金型です。プレス加工の命といっても過言ではないでしょう。金型の精度で製品の品質がほぼ決まります。
冒頭にもお話ししたとおり、金型は上型と下型に分かれています。2つを組み合わせ、その隙間に板状の金属を挟み込み、圧力をかけることにより加工していきます。
金型は数百〜数千のパーツで構成されていて、とても複雑なものです。製作にはかなりのノウハウが必要とされています。
例えば、丸い製品を作りたいと思っても、単に型を丸くすればできるというものではありません。金属には応力(金属材料に荷重をかけた時に発生する、その荷重に抵抗してつり合いを保とうとする力。つまりプレスの場合は押し戻そうとする力)が働きますが、この応力を考慮に入れて設計しないと、丸い製品はできないのです。
価格は、安いものですと20万円〜30万円程度でできますが、通常は数百万円程度、中には数千万円程度の金型もあるほどです。
一般的に金型は金型製作の専門業者があり、プレス加工メーカーはこの金型メーカーに金型を発注します。しかし、当社は自社で金型を製作する設備とノウハウを持っており、自社内で設計から作製まで行っております。これにより、急な設計変更にも柔軟に対応することができ、また金型のノウハウを深めていくことにより、従来プレス加工ではできないと言われていた加工を、次々と実現しています。
工程の細分化
金型設計の難しい点は、工程をいくつもに細分化しなければならないという点です。金属板を一気に目標とする形に加工しようとすると、金属に無理な力がかかり成形できません。
このため、目標の形にするまでに、幾つかのステップを踏んでいきます。複雑なものになると1つの製品を作るのに10以上のステップを必要とします。つまり製品1つを作るに10回以上、異なった工程の型でプレスしなければならないということです。
実際は、1つの金型の中で、ステップ1からステップ10までの工程が順番にプレスされるように設計しています。この設計には豊富な知識と経験が必要とされます。
当社は、この一つの金型で複雑な複数の工程を行うことができます。当社ではこの技術のことを「連続コイニング加工技術」と呼んでおり、長い年月をかけて確立しました。
プレス加工の難しさ
プレス加工は、金型と材料をセットしてプレス機を動かせば、高い精度で同じ製品を作り続けることができます。順調に動いているときには、作業員が機械から離れていても問題はありません。
しかし、順調に動く段階にまで持っていくまでの段階では、難しい問題が起こります。
例えばプレス機の温まり具合によって製品の出来が変わってきます。当社ではミクロン単位の精度の製品を製造していますが、機械の温まっていない状態の材料の送り幅と、温まった状態の送り幅が微妙に異なってきます。連続した工程を通していく、連続コイニング加工を行っている場合、少しのずれが最終的には大きなずれとなり、品質の低下を招いてしまいます。
他にも気温や湿度にも影響されます。また使用する機械油の量などでも影響を受けます。セットしたらボタンを押せばよいというものではなく、細かな調整なしには精度の高い製品を作ることはできないのです。